ポー以来の怪奇幻想文学の伝統に、化学・生物学・物理学・考古学など幅広い科学的モチーフを見事に融合させ、南米的マジックリアリズムを加えたような作風といえば、小説好きなら気にならない人はいないでしょう。そして、その作家自身、「小説よりも奇なり」な運命を辿ったと聞いたら……。
2020年1月に光文社古典新訳文庫から刊行されたルゴーネス『アラバスターの壺/女王の瞳』は、まさにそんな短篇集。エジプトの墳墓発掘にまつわる実際の事件を下敷きにした連作の表題作、画期的な装置の発明者の最期を描く「オメガ波」など、選りすぐりの18篇を収録し、発売以来、高い評価を得ています。
南米文学の作家といえば、コロンビアのガルシア=マルケス、ペルーのバルガス=リョサ、アルゼンチンのボルヘス、コルタサルなどが有名ですが、ルゴーネスはいわば彼らの「源流」に位置するといえる作家。今回の読書会では、この短篇集を新訳された大西亮さんに、唯一無二といえるルゴーネス文学の魅力を(そして作家の身に降りかかった悲劇についても)たっぷりと語って頂きます。
(聞き手:光文社古典新訳文庫・創刊編集長 駒井稔)