「人生は浪費すれば短いが、過ごし方しだいで長くなる」。2000年も前にこう説いたのは、混乱と喧騒の巨大都市ローマに生きた哲学者セネカ。21世紀の今でも、わたしたちは、あいかわらず多忙の中で生きていますし、もしかしたら、多忙による自己喪失の度合いは、現代のほうがはるかに大きいのかもしれません。そんななか、コロナ感染拡大でわたしたちを取り巻く状況は一変しました。在宅勤務や不要不急の外出を控えるなどで“おうち時間”が増えました。どう自分の時間を使うか、どのように人生を過ごすのか。
セネカによれば、過去の哲人たちの優れた英知を手に入れることによって、現在の一瞬一瞬に集中し、時間を無駄にすることなく、自分のために有意味に生きることができるようになる、とのこと。このようにして「今を生きる」ことによって、現在という短い時間は、無限に広がっていくことになります。
今回の読書会では、このストア派のセネカが説く実践哲学について、訳者の中澤務さんに詳しく語ってもらいます。セネカの考察は、現代のわたしたちが自分の本当の時間を取り戻すためにも、重要な手がかりを与えてくれるでしょう。
(聞き手:光文社古典新訳文庫・創刊編集長 駒井稔)