この9月に完結となった『戦争と平和』は、19世紀初頭のナポレオン戦争の時代を舞台に、ロシア貴族の興亡からロシアの大地で生きる農民にいたるまで、国難に立ち向かう人びとの姿を描いたトルストイの代表作です。
登場人物が500人を超えるとか、歴史論を展開するエピローグまで含めた本編の後にトルストイ自身によるこの小説についての考えが付されるなど、長大であり、また複雑さをもったこの作品を前に、読者としては尻込みしそうになるかもしれませんが、心配はありません。有名なアウステルリッツ会戦やボロジノ会戦、またモスクワをめぐる攻防、パルチザン戦などの戦場シーンはもちろん、社交界でのシーンやそれぞれのカップルの恋愛模様、各家族のありようまで、それぞれのエピソードはそれほど長くなく、読みどころが満載なのです。そして、このエピソードを繋ぎ合わせて物語が進行する構成には、全巻に付した主要登場人物紹介のしおりが援軍になるはずです。
ということで、今回は、「あらゆる小説の中でもっとも偉大な作品」(モーム)と呼ばれるこの作品の魅力について、また読み通すための“コツ”についても、訳者の望月さんに存分に語ってもらいます。
(聞き手:光文社古典新訳文庫・創刊編集長 駒井稔)