20世紀フランスを代表する作家アルベール・カミュの小説『ペスト』が、新型コロナウイルスのパンデミック以来、全世界でふたたび注目されています。
『ペスト』の舞台は1940年代、アルジェリアのオラン市。突如として死の伝染病が発生した同市は市境が封鎖され、人々の行動は大幅に制限されることに。感染者が増えるにつれ、病床や埋葬地が不足し、血清の開発にも時間がかかり――と、まさに現代のわたしたちが経験しているものと相似形の光景が描かれていることに、読者は驚くことでしょう。
疫病、あるいは戦争や天災など、恐るべき力で日常生活を支配する、人間には理解不能な災厄――それこそがカミュ文学の大きなテーマ「不条理」なのです。絶望的なテーマに思えますが、カミュは『ペスト』では、その不条理に降参せず、事態の収拾のために奔走する人々の姿を描くことで、少なくとも希望を見出そうとしているように思えます。いつ終えるとも知れぬ災厄の中にあるわたしたちは、カミュの小説を読んで、何を学び、いかに振る舞うべきなのでしょうか。
今回の読書会では、光文社古典新訳文庫『ベスト』の翻訳者である、フランス文学者の中条省平さんをお迎えし、この作品の魅力と、いま読む意義とをたっぷりと語っていただきます。
中条さんは、2018年にはNHK「100分de名著」の『ペスト』の回にも出演され、また今年8月には新著『カミュ伝』も発売になっています(インターナショナル新書)。ぜひこの機会に、中条さんのわかりやすい新訳と、切れ味の良い解説で『ペスト』を味わってみませんか。
(聞き手:光文社古典新訳文庫・創刊編集長 駒井稔)