大好評でロングラン上映中の映画『ドライブ・マイカー』の劇中劇で、あらためて注目されているチェーホフの戯曲『ワーニャ伯父さん』。若い姪ソーニャと二人、都会暮らしの教授に仕送りしてきたものの、その教授の後妻エレーナに心を寄せても相手にされず、棒に振った人生への後悔の念にさいなまれ、もはや取り返しのつかない自分の人生のやり場に困り果てているワーニャを描いたチェーホフの代表作(戯曲)の一つです。モスクワへの帰郷を夢見ながら、次第に出口のない現実に追い込まれていく『三人姉妹』や、競売にかけられてしまう美しい桜が咲く領地を舞台にした『桜の園』、そして作家志望のトレープレフと女優を志すニーナを軸に、さまざまな恋が織りなす人生模様を描いた『かもめ』とあわせて4大戯曲と言われ、初演以来、いまも舞台で上演され続けている名作です。人生のそれぞれの場面で生きていくことの難しさに悩む登場人物に、その時代時代で観客(読者)はその境遇や心情に心を寄せてきました。今回は、時代を超えて愛されているチェーホフの芝居の魅力について、訳者の浦雅春さんに語っていただきます。
(聞き手:光文社古典新訳文庫・創刊編集長 駒井稔)