パリで貧しく暮らす若き芸術家たちの自由放埓な生、恋愛、夢と蹉跌を赤裸々に描いた青春小説『ラ・ボエーム ボヘミアン生活の情景』。1845年から4年にわたって新聞連載されたこの小説は、のちにプッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』や、ブロードウェイ・ミュージカル『レント』、映画『ムーラン・ルージュ』の原作となるなど、多くの芸術に絶大な影響を与えてきました。
しかし、これら華々しい舞台化・映画化作品の名声ほどには、小説としての『ラ・ボエーム』や作家アンリ・ミュルジェールについてはあまり知られていませんでした。日本では、1928年に抄訳が刊行されたのみで、長いあいだ原作全篇を読むことすらかなわなかったのです。2019年、ようやく辻村永樹さんが全篇を新訳されたことで、この作品のありのままの鮮烈な姿を読みやすい日本語で味わうことができるようになりました。
今回の読書会では、記念すべきアンリ・ミュルジェールの生誕200年という機会に、『ラ・ボエーム』新訳を手掛けられた翻訳者・辻村永樹さんをお迎えし、色あせない本作の魅力と、知られざる作家の短くも波瀾の人生についてたっぷり語っていただきます。
(聞き手:光文社古典新訳文庫・創刊編集長 駒井稔)