光文社古典新訳文庫のジッド作品では『狭き門』と『ソヴィエト旅行記』の2タイトルがありますが、今回はまったく趣の異なる小説『法王庁の抜け穴』を取り上げます。
奇蹟によってカトリックに回心したフリーメーソン会員のアンティムと、幽閉されたローマ法王を救い出すという詐欺を企てる詐欺団の首領プロトス。予期せぬ遺産を手にしながらも「無償の行為」に走るラフカディオ。凡庸な道徳と穏健な思想の持ち主である作家ジュリウス……。多様な作中人物が行き交い、それぞれに起こる出来事が複雑に絡みあい、物語は進行します。誰が? なぜ? どのようにして? 詐欺事件の結末はいかに?
実際にあった詐欺事件に着想を得て仕上げた本作品を、ジッドは自作品を分類するジャンルとして「ソチ(茶番劇)」と名づけました。今回の読書会では訳者の三ツ堀広一郎さんをお迎えし、この意図するところも含め本作品の魅力について詳しく語っていただきます。
(聞き手:光文社古典新訳文庫・創刊編集長 駒井稔)