光文社古典新訳文庫から2月に刊行した『人間のしがらみ』はこれまで『人間の絆』と訳されてきた英国の文豪サマセット・モームによる自伝的長編小説です。ご覧になればわかる通り、タイトルまで“新訳”をした本作。「絆」から「しがらみ」へと変わると、随分印象が違ってくるのではないでしょうか。
『人間のしがらみ』の主人公フィリップは、幼くして両親を亡くし、伯父伯母夫婦のもとに預けられます。外国生活に憧れてハイデルベルクへ、芸術家になることを夢見てパリへと留学したり、就職するべくロンドンへ戻ってきたりと、理想と現実の狭間をもがき進むフィリップ。様々な出会いがあり、そしてその出会いに翻弄されていきます。自分を愛してくれない人への執着をはじめとして、フィリップが理性的に行動することのできない様はまさに「しがらみ」に陥っている状態。そんなフィリップがままならない人生のなかで見つけた“真実”とは……?
今回の読書会では、『人間のしがらみ』の新訳を手掛けられた河合祥一郎さんをお迎えし、モームが「しがらみ」を通して描こうとしたこと、またモームの創作者としての技量の高さなど、この作品の魅力を語って頂きます。
(聞き手:光文社古典新訳文庫・創刊編集長 駒井稔)