数々の詩や『ジャングル・ブック』『プークが丘の妖精パック』などの小説で英国の国民的作家となり、ノーベル文学賞も受賞したラドヤード・キプリング(1865-1936)。しかし現代では、植民地支配を正当化した帝国主義者とみなされることもあり、文学者としては毀誉褒貶が相半ばしています。
とはいえ、その代表作の一つである『キム』がいまこそ読まれるべき相当な傑作であることは間違いないでしょう。舞台は、キプリング自身が生まれ育った英領インド。一人の少年の成長物語あるいはロードノベルとして読めますが、多彩な国籍、宗教、文化、年齢の人々と交流したり衝突したりするさまはまさに多様性と寛容/不寛容という現代的テーマそのもの。そして、版図拡大を目指すロシアと西側諸国とのせめぎあいは、100年以上の時を経てもいまだに解決しない問題であることはご承知のとおりです。
キプリングはどのようにしてこの緻密な物語を構想し、何を語ろうとしていたのでしょうか。今回の読書会では、『キム』を新訳された英文学者の木村政則さんをお迎えし、『キム』の魅力とキプリング文学についてたっぷり語って頂きます。
(聞き手:光文社古典新訳文庫・創刊編集長 駒井稔)