チャールズ・ブコウスキーといえば、アウトロー的な生き方と、平明な表現とで、日本でも90年代に人気を博した作家で、『詩人と女たち』、『町でいちばんの美女』など、多くの長篇、短篇集、詩集などが刊行されました。今回、光文社古典新訳文庫から新訳となった『郵便局(Post Office)』は、ブコウスキーの長篇デビュー作であり、自身のデビュー直前の約10年間をモデルとして描かれた自伝的小説です。
バブル崩壊直後の90年代には、ブコウスキー(をモデルとした主人公)の気儘で自由な生き方に、多くの日本人読者はちょっとした羨ましさを感じ、生き方を見直すきっかけになったのかもしれません。しかしブームから30年経ち、日本でも経済格差や労働倫理に目が向くようになったいま、あらためて『郵便局』を読んでみると、社会の底辺を描くブコウスキーの描写の的確さやリアリティに驚かされます。
今回の読書会では、『郵便局』を新訳された都甲幸治さんをお招きし、本書の魅力について、そしてこの本の読みどころについて、たっぷり(しかし気ままに)、語っていただきます。
(聞き手:光文社古典新訳文庫・創刊編集長 駒井稔)