2023.07.28

求ム、ヴァンパイア・ハンター! 光文社古典新訳文庫で吸血鬼物語を連続刊行!

ここ10年ほどは世界的に空前のゾンビブームで、連中の頭をぶん殴るための武器なしには外出もままならない状況でしたが、今年後半は、生き血に飢えた吸血鬼(ヴァンパイア)たちがふたたびこの世に跋扈します!

光文社古典新訳文庫では、多くの吸血鬼カルチャーの原型となった3つの物語、テオフィル・ゴーティエ「死霊の恋」ブラム・ストーカー『ドラキュラ』レ・ファニュ「カーミラ」を、8月から隔月連続刊行します!

ヴァンパイアはこれまで多くの文学作品や映画・ドラマなどのモチーフとなってきました。時に不気味に、時に美しく描かれる彼らは、夜の世界の住人として、読書家たちとの相性がいいのかも。いまこそ古典を読んで、襲来に備えよ!

8月9日発売
テオフィル・ゴーティエ「死霊の恋」(1836年)

(『死霊の恋/化身 ゴーティエ恋愛奇譚集』所収)

吸血鬼文学第1弾は、フランスの作家ゴーティエの幻想怪奇短篇集から。フローベール、ボードレール、ユゴーらに愛された「文学の魔術師」による、禁じられた恋の物語。

訳者・永田千奈さんからのメッセージ

謎の美女クラリモンド、実は吸血鬼(ああ、ネタバレになってしまう)。だが、不思議と怖くはない。そもそも、彼女はただ好きなひとのそばで人生を楽しみたいだけなのだ。訳しているうちに彼女から「私は恋をしただけ、それのどこが悪いというの?」と問いかけられたような気がした。かわいそうな女、それとも悪女? いや、人間の方がずっと恐ろしい、のかも。

10月12日発売
ブラム・ストーカー『ドラキュラ』 (1897年)

吸血鬼といえばこの作品を読まないわけにはいかない! トランシルヴァニアの古城に眠っていたドラキュラ伯爵をめぐる冒険物語。19世紀吸血鬼文学の集大成は、失血必至の800頁級!

訳者・唐戸信嘉さんからのメッセージ

吸血鬼の物語の代表格『ドラキュラ』。イギリス侵略を企てるドラキュラ伯爵を、ヴァン・ヘルシング率いるヴァンパイア・ハンターたちが迎え撃つ。あまりに有名な物語だが、原作を読んでいる人は少ない。確かに分厚い本だ。しかし読み始めればわかるが、冗長さは微塵もなく、本の厚みを感じさせない。キャラの立った登場人物、数々の見事な伏線、エロスとホラー、ヨーロッパを縦断する追跡劇。どこを切り取っても模範的なエンターテイメントとしか言いようがない。

12月12日発売
レ・ファニュ「カーミラ」(1872年)

(『カーミラ レ・ファニュ傑作選』所収

作家の没後150年。ゴシック小説の天才レ・ファニュ晩年の傑作。以後の吸血鬼の性質を確立し、『ドラキュラ』にも多大な影響を与えたといわれるヴァンパイア少女の物語。

訳者・南條竹則さんからのメッセージ

ポリドリの「吸血鬼」からブラム・ストーカーの「ドラキュラ」に至る英国吸血鬼小説の中でも、シェリダン・レ・ファニュの「カーミラ」は特異な性格を持っている。

というのも、女性同性愛と吸血鬼伝説とを結びつけた、おそらく最初の試みであるからだ。主人公カーミラの魅惑が、うぶな乙女の目を通して、何とも官能的に描かれる。

これは今読んでも強烈だ。道徳的にやかましかったヴィクトリア女王時代に、よく発表できたものだ。