仏教と聞くと法事などの「お経」を連想される方も多いと思います。お経はブッダの教えを体系化して漢訳した仏典ですが、日本人の場合、その意味もわからないまま、なんとなく「ありがたいもの」として受け入れているケースも多いのではないでしょうか。しかしご存じのように、ブッダはインドに生まれた人であり、現地の平易な日常語で人々に語りかけ、自ら発見した道を説いてまわっていました。
『スッタニパータ』『ダンマパダ』は、現地語に近いパーリ語で編纂された最古の仏典の双璧であり、ブッダの教えに最も近づける文献です。難解な漢訳語を介さずに原文から日本語に直接翻訳すると、民衆や権力者と真摯に向き合うブッダの姿、そして驚くほど論理的で科学的、そして実践的なその思想が浮かびあがってきます。
今回の読書会では、『スッタニパータ』と『ダンマパダ』を光文社古典新訳文庫で新訳された今枝由郎さんを迎え、この二書目が伝えているブッダの活動と思想について、また翻訳の意図や工夫についても、たっぷり語って頂きます。
なお、今枝由郎さんは、フランスを拠点としたチベット・ブータン歴史文献学の分野での多大な業績、国内外で最先端の仏教研究に従事された功績をたたえられ、本年度の「仏教伝道文化賞」を受賞されています。これまでのご活動についても貴重なお話をうかがいたいと思います。
(聞き手:光文社古典新訳文庫・創刊編集長 駒井稔)