今回取り上げるのは、8月刊ゴーティエ『死霊の恋/化身』、10月刊ブラム・ストーカー『ドラキュラ』と続いた光文社古典新訳文庫の「吸血鬼文学」企画のラスト、レ・ファニュの『カーミラ』になります。
物語の舞台はオーストリアの暗い森の中にたたずむ古城。旅の途中、馬車の暴走事故でこの城に預けられ、共に生活することになったカーミラの、甘い囁きと情熱的なスキンシップに、純真な少女ローラは次第に魅かれていきます。しかし、彼女の不可解な行動を不審に思いながら過ごすローラは、日に日に生気を奪われ、蝕まれていくのでした……。
吸血鬼小説の古典として『ドラキュラ』に次いで有名であり、そのドラキュラに大きな影響を与えた本作のいちばんの特徴は、なんと言っても、吸血鬼が魅力的な女の魔物であり、同性の少女との同性愛的な色彩が濃厚なところです。今回の読書会では、訳者の南條竹則さんに、この特異な女吸血鬼カーミラの魅力についてたっぷり語っていただきます。あわせて、収録した「緑茶」「シャルケン画伯」など五編の怪奇幽霊譚の魅力についても触れていただきます。
(聞き手:光文社古典新訳文庫・創刊編集長 駒井稔)