駆け落ち、心中、不義密通……。瞬間的に燃え上がる恋には何かと世間の厄介ごとがつきまとうもので……。時は江戸時代。“お夏清十郎”や“八百屋お七”など、当時実際に起こった事件をモデルに西鶴が創り上げた極上のエンタメ小説五作、『好色五人女』を今回取り上げます。性愛と「義」をめぐる物語から、はかない今を恋に賭ける五人の女たちにリアルな姿が浮かびあがります。それぞれの女性たちの恋の結末は?
新訳するにあたり訳者の田中さんは、西鶴のスピーディでユーモラスな語りの面白みを反映させるべく、目の前で現代の噺家が落語の人情話を語っているような文体を選びました。想定した語り手は、「少し頑固で頭が固く、しかし好奇心旺盛で情にあついおじさん」。噺家の口調を駆使した臨場感たっぷりな新訳です。
今回の読書会では訳者の田中貴子さんをお迎えして、この「傑作恋愛短編集」である『好色五人女』の魅力と読みどころを、また訳文の工夫についても語っていただきます。
(聞き手:光文社古典新訳文庫・創刊編集長 駒井稔)