恋の恍惚の高みから、絶望の淵へ……ドイツの作家ゲーテの『若きウェルテルの悩み』といえば、若者が激しい感情を解き放つような「疾風怒濤(シュトゥルム・ウント・ドラング)の時代」の代表格として知られています。
『若きウェルテルの悩み』は1774年に当初匿名で刊行されるや、若者に熱狂的に支持されることになります。ウェルテル風の服装や言葉遣いが流行した一方で、劇的な結末に刺激され、自殺者が急増したともいわれています。いったいこの作品の何が、若者を熱狂に駆り立てたのでしょうか。
また、実はこれまで日本で訳されてきた「ウェルテル」のほとんどは、数年後にゲーテが改稿した「改訂版」を訳したものでした。今年2月に刊行された今回の光文社古典新訳文庫版「ウェルテル」は、実際に若者が読みふけった「初版」を底本としています。両者にはどのような違いがあるのでしょうか。
今回の読書会では、新訳を手掛けた酒寄進一さんをゲストに迎え、本作の成立過程や魅力について、たっぷりと語っていただきます。
(聞き手:光文社古典新訳文庫・創刊編集長 駒井稔)