眠れない夜が明ける頃、ひとりの幽霊がぼくをあの世の旅へと連れ出してくれるという。寝間着のまま壁をすり抜けて世界を飛び回り、地獄から天国までの愉快な場面を見物することになるが……
往年のイタリア映画『自転車泥棒』や『ひまわり』の脚本家としてよく知られているザヴァッティーニは、文学・ジャーナリズム・絵画の各分野でもそれぞれ傑出した成果を挙げ、文化振興や社会活動にも身を捧げてきた経歴をもつ人です。
『ぼくのことをたくさん話そう』は彼の小説デビュー作で、ダンテ『神曲』の構造とモチーフを借りつつも、ユーモラスな挿話を次々と重ねていく手法によって、発想の妙、軽快な展開が楽しい小説に仕上がっています。ぜひ多くの方に気軽に手に取って読んでいただきたい一冊です。
今回の読書会では、この作品を日本で初めて翻訳された石田聖子さんをお迎えし、ザヴァッティーニの多彩な才能について、またその物語創作力の原点となったこの小説の魅力について。たっぷりと語っていただきたいと思います。
(聞き手:光文社古典新訳文庫・創刊編集長 駒井稔)