「どうか皆さん、最近、似たような行為が私たちにあったのではないか、いや、似たような行為はなかったのではないかと心の中をじっくりさぐって頂きたい」(プロローグ)。
ギリシア悲劇の設定を変え、斬新な装置の演出で観る者へ問いかけるブレヒトの傑作。21世紀の今こそ、読まれるべき作品と言えよう。
テーバイの王クレオンが仕掛けた侵略戦争で、戦場から逃亡し殺されたポリュネイケス。王は彼の屍を葬ることを禁じるのだが、アンティゴネはその禁を破って兄を弔い、伯父クレオンに抵抗する......。詩人ヘルダーリン訳に基づき、ギリシア悲劇を改作したブレヒトの今日性あふれる傑作。
ベルトルト・ブレヒト Bertolt Brecht |
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[ 1898 - 1956 ] ドイツの劇作家、詩人、演出家。南ドイツ生まれ。1917年ミュンヘン大学哲学部に入学したのち、医学部に転部。1918年に第一次世界大戦に召集され衛生兵として勤務。1922年ミュンヘンで初演の『夜打つ太鼓』が成功をおさめ、一躍脚光を浴びる。ナチスの弾圧を逃れ、1933年から北欧、アメリカと亡命生活を続ける。戦後は東ドイツに戻り、劇団を設立。自らの演劇活動を再開させたが1956年心筋梗塞のため死去。「叙事的演劇」「異化効果」「教育劇」をはじめ、さまざまな新しい演劇の理論を生みだし実践することで、戦後の演劇界に大きな影響を与えた。代表作に『三文オペラ』『母アンナの子連れ従軍記』『ガリレイの生涯』『セチュアンの善人』など。 |
[訳者] 谷川道子 Tanigawa Michiko |
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東京外国語大学名誉教授。ブレヒトやハイナー・ミュラー、ピナ・バウシュを中心としたドイツ現代演劇が専門。著書に『娼婦と聖母を越えて----ブレヒトと女たちの共生』、『演劇の未来形』など。訳書に『母アンナの子連れ従軍記』『ガリレオの生涯』『三文オペラ』(ブレヒト)、『汝、気にすることなかれ』(イェリネク)、『指令』(ハイナー・ミュラー)、『ピナ・バウシュ----怖がらずに踊ってごらん』(シュミット)、『ブレヒト作業日誌』(全2巻、共訳)他多数。 |