2011.08.11
《書評》『梁塵秘抄』ー 日刊ゲンダイ 2011年8月10日
「(前略)川村さんが、『梁塵秘抄』の現代語訳に取組んでいるときいた時から、私はかたずをのんで世に出るのを待っていた。 (中略)
「川村氏は書く。<(前略)今様のかなりの部分は、当時の一流の知識人、歌人、学者、高僧、神官たちが作ったものと考えられるのであり、庶民の間からから生まれてきた民謡や即興の歌詞が定着したと思われるものは、案外に少ないのである。(後略)>
これは重要な指摘だ。今様の作詞者と、歌い手がちがうことは、大事なことで、だからこそ今に伝わる名歌が残っているのだろうと私も思う。
(中略)
仏は常にいませども
現ならぬぞあわれなる
人の音せぬ暁に
ほのかに夢に見えたまう
この歌は、川村訳だと、こうなる。
〈いつでもいるわ わたしのいいひと 見えなくても 触れなくても ひとごえさえも 消えはてて わたしにわかるの 夜明けの夢にこっそりと〉
さて、読者の皆さんの感想はいかがだろうか。この歌詞には、どんな曲がつくのだろう。勝手に想像するのが夏の夜の楽しみというものだ。」