去る11月13日、翻訳者の関口英子さんがピランデッロ『月を見つけたチャウラ』で受賞された「須賀敦子翻訳賞」の授賞式が、東京・九段南のイタリア文化会館で行われました。
「須賀敦子翻訳賞」は今年から創設された賞で、イタリア語から日本語への優れた翻訳書に対し、イタリア文化会館から贈られる賞です。(詳しくはこちら)
文学賞の授賞式というと、主催者の挨拶、選考委員の選評、受賞者の挨拶といった式次第が粛々と進められるのが通例ですが、今回の会場はイタリア文化会館内の立派なアニェッリホール。いつもとはちょっと違う雰囲気です。開会の挨拶に引き続き、日本文学者で川端康成などのイタリア語への翻訳者としても名高いジョルジョ・アミトラーノ館長の挨拶、ピアノ演奏(ピランデッロと馴染みの深いサティ、カゼッラの曲)、その後なんと女優・竹下景子さんによる須賀敦子作品の朗読、と豪華なプログラム! さすがイタリア、文化的イベントに対する考え方の違いを思い知らされました。
その後、選考委員長の和田忠彦さん(東京外国語大学大学院教授)の選評に続き、今回の受賞者3名に楯と副賞が授与されました(関口英子さん『月を見つけたチャウラ ピランデッロ短篇集』、白崎容子さん・尾河直哉さん『ピランデッロ短編集 カオス・シチリア物語』)。心よりお祝いを申し上げます!
式のプログラムは基本的に日本語とイタリア語で交互に話す二カ国語で進められたのですが(朗読などは字幕つき)、受賞されたお三方の受賞スピーチもまた二カ国語でした! 翻訳者さんたちの流暢なイタリア語を聞いていると、ああこういう方たちが文化と文化をつなげているんだなと感銘を受けずにはいられません。
授賞式に引き続いては、各受賞者による受賞作品の朗読がありました。関口英子さんは『月を見つけたチャウラ』の中から「使徒書簡朗誦係」の一節を朗読されました。翻訳者さんがどの作品のどの部分を選び、どのように読むか、というのはとても興味深いところ。この本のなかで訳者がもっともピランデッロらしいと思っている部分、あるいは翻訳者のお気に入りの部分なのでしょう。また、耳で聞いただけで、すんなりと物語の情景が頭に浮かぶのは、文庫創刊以来「いま、息をしている言葉」で翻訳していただいている関口さんの訳のすばらしさなのだと思います。
観覧しているだけでも得るところの多い、素敵な授賞式でした。未読の方はこの機にぜひピランデッロ『月を見つけたチャウラ』を手にとってみてください。ユーモアと暖かさと皮肉が同居する、なんとも不思議な短篇集です!
最後になりますが、あらためまして、関口英子さん、受賞おめでとうございます!