有名作家が別の筆名で発表した小説が大反響を呼び、あわや新人賞を獲りそうになる? これはまさにドイツの小説家ヘッセが、「エーミール・シンクレア」という若者になりすまして『デーミアン』を発表した後に起こった事件でした。この出来事は図らずもヘッセの卓抜した筆力を証明することになったわけですが、果たして、すでに名声を得ていたヘッセが、なぜ別人の名前で小説を書かなくてはならなかったのでしょうか。そんな『デーミアン』が出版直後から大ベストセラーとなり、いまだに世界中の若い読者を魅了してやまないのはなぜなのでしょうか。
今回の読書会では、『デーミアン』を新訳された酒寄進一さんに、本作の魅力、そしてヘッセ文学の楽しみ方を語って頂きます。
(聞き手:光文社古典新訳文庫・創刊編集長 駒井稔)