安西徹雄先生が亡くなられて、はや10年がたちました。安西先生の演出・翻訳の活動の拠点だった〈演劇集団 円〉では、今月20日から、安西徹雄先生の没後10年企画として「十二夜」(翻訳/安西徹雄 演出/渡邉さつき)の公演が始まります。
古典新訳文庫の安西先生による新訳『十二夜』(2007年刊行)は、1992年の東京グローブ座での上演台本(オーシーノ:有川博、ヴァイオラ:松本留美、オリヴィア:高林由紀子ほか)を土台にした完訳版です。
その巻末のあとがきには、
「戯曲の翻訳は、ただ単に、字義的な意味を伝えるのが目的ではない。生きたせりふのいき、その躍動感を、できる限り直に、役者や観客、あるいは読者の方々に追体験していただくことにある。
大体せりふというものは、あくまでもある特定の人物が、ある特定の情況のもとで、 誰か特定の相手にむかって、何か特定の情念や思念を、具体的に訴えかけ、働きかけるものである。つまり、何かの行動にともなって発せられる言葉というよりも、むしろ端的に、言葉そのものが行動であり、身振りなのだ。
したがって、せりふを訳すということは、ただ単に意味を伝えることではなくて、この身振りとしての言葉の生動──全人格的な運動の言語的な発動、その息遣い、弾み、ほとんど筋肉的な律動を、できる限り生き生きと喚起・再現するものでなくてはならない。」
とあります。(全文を載せたくなります。ぜひ本書で全文お読みください)
安西先生の躍動感あふれる言葉、せりふに触れると、「演劇を体験したい」という気持ちが高まります。古典新訳文庫では『十二夜』のほか、全6作のシェイクスピア作品を新訳してくださいました。どの作品も素晴らしい「安西シェイクスピア」戯曲です。ぜひお読みください、そして劇場で役者さんのせりふで体験してください!